1. 第7回 ガーデン・ツール 一生ものと出会おう

吉谷桂子さんのガーデンデザイン講座

第7回 
ガーデン・ツール 一生ものと出会おう

フェティッシュという言葉がある。 辞書には「物神」とあったが、ある特定のものを崇拝したり、熱愛したり、こだわってお金をかけたりというような感じとでも言ったらよいのか。そんな人のことを、日本の若い子達は「フェチ」と呼んでいる。

英国に住んでいたとき、あちらこちらで出会ったガーデナー達は、まさに「園芸用品フェチ」が多かった。それで、感心したのが、あまりお金持ちでもなさそうなのに、彼らが好んで結構高額な園芸道具を持っていたこと。

英国に住んで園芸に熱中した初期のころ、私自身が所得ゼロの貧乏生活をしていた背景もあって、そんな高額な園芸道具の代表であるフェルコ社製の剪定鋏が「なぜだ!ホワイ?」と、首を傾げたくなるほどに高価で買えなかったことを覚えている。それは、確か日本円にすると¥14,000くらいだった。

「こんなの買えない」 で、私は、近くの量販店で、デザインがシンプルで好感のもてる¥1,400くらいの価格の剪定鋏を買って用途を満たしていた。ただ2〜3年も使うとその鋏はすっかり錆び、堅い枝が切れなくなり、しまいには、花殻さえ摘めなくなっていた。そしてなによりも、その鋏のチープな存在感を愛せなくなっていた。

その後、英国にいながら収入のめどがつき、本の印税が入ったので、その記念にと、あの冗談みたいに高価な鋏を買うことを思いついた。

正式名称はスイス、フェルコ社のセカタース。 あれからずっと使い続けて、5年以上が経過したはずだが、その重厚な存在感、切れ味はまったく変わっていない。 この鋏を手にするたび、何かほんわかと嬉しく、ひょいと机の上においてある姿も、常に私の心を和ませる。解体して刃を研ぐことも出来るのだが、今の所、切れ味が変わらないのでそれを試したことはない。

鋏コレクション。 中央の赤いのがフェルコのもの。 あとの3つは私がデザインした日本の剪定鋏。

また、鋏と同じような理由で、ジョウロも、初めのうちは安価なポリ製のものを使っていたが、どうも、それが庭に置いてある「風景」が貧相に感じられて、やはり、英国人のガーデナーたちがこだわって使用しているブリキ製を購入した。 それが庭にあるだけで、庭の景色が豊かに夢見がちになる。ポリのジョウロではどうも、現実的で寂しい。

ブリキのジョウロは、一つ一つが手作りだ。やはり高価なのだが、田舎の古道具屋へいくと、中古のブリキのジョウロが意外な安価で売られていた。 英国じゅうの田舎を旅して出会うブリキのジョウロは、一つとして同じ物がない。それで、コレクションに火がついた。 それと同じ理由で、トロウェル(移植ゴテ)、フォークほか、さまざまなガーデンツールのアンティークのコレクションも始まった。私は今、まさに「園芸用品フェチ」になった。

何故こんなにも、これらのツールを愛するのだろう。今、改めて自問自答。答えはやはり「これらの道具が美しいから」。 機能を追求しながらも、美しいプロポーションを求めて、昔の職人さんの作った道具の数々の存在感に、心惹かれる。そして、ひとたび、これらの道具が庭で使われるとき、または、庭に存在するとき、これらの道具を自分自身が所有していることへの満足感が、ず〜っとずう〜と末長く続くような、嬉しい予感がする。

どんな存在も「使い捨て」ではなく「一生の友」として出会えたら、それがその人を、ちょっと幸せにしてくれるのではないだろうか。私自身もデザイナーとして、そんな仕事をしたいと願う。

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