1. 第3回 カラー・スキーム

吉谷桂子さんのガーデンデザイン講座

第3回 
カラー・スキーム

草花のフォルムの次は色彩について考えてみよう。

皆さんは、庭における「カラー・スキーム(色彩計画)」という言葉を耳にしたことがおありだろうか。イングリッシュ・ガーデン生みの父といわれるウイリアム・ロビンソンは1883年の著書「The English Flower Garden and Home Grounds」で、こう記している。

「庭のアレンジでもっとも重要な点は、色の効果を考えて花を配置していくことである」と。百年以上も前にこのような発想があったことに驚かされる。

次に、20世紀初頭。イングリッシュ・ガーデン生みの母といわれるガートルード・ジーキル女史はウイリアム・ロビンソンに強く影響を受けた人物と言われているが、実際に庭の"カラー・スキーム"という考え方を、明確な庭づくりのコンセプトとして打ち出した。

白い花と白い斑入り植物などを使った「ホワイトガーデン」や「イエロー&ブルーガーデン」など意図的な色彩で構成された庭が続々と登場。それが現在のイングリッシュ・ガーデンの原型となり、テーマをもって植物の色彩を計画的に配置するカラー・スキームの考え方が、その後英国の庭に定着した。

ブルー&イエローの組み合わせも ジーキル女史によって生み出された カラースキームだが、 この補色対比の組み合わせが、 庭の景色に思いのほか映える。

私が去年作った寄せ植えと、今年のガーデニングショウで 私がデザインしたブルー&イエローの庭。 ガレージの車もカラースキームの一員だ。

さて現在に至っては、こうした先達の考え方を踏まえた沢山の美しいカラー・スキームのガーデンが英国に存在する。

現代英国を代表する園芸家ペネロピー・ホブハウス女史は、名園ティンティンハルを再生するチャンスを得たときに、来る日も来る日も印象派の絵画の色彩構成を研究し、花と葉、周囲の木や壁がつくり出す光の反射と影の効果、また、花のピークの状態ばかりでなく、蕾の時の効果や、結実してからの効果、葉っぱの色と質感(艶のある植物、艶消しの植物、堅い植物柔らかい植物など)の組み合わせも計算に入れて、複雑に植物を構成し、また時間の流れも全て計画にいれて庭をデザインをしたそう。

また、色彩の魔術師の異名をとる英国ハドスペン・ガーデンのヘッドガーデナー、ノリ・ポープ氏によると
「無計画に植物を植えたり、たとえ何か意図があっても花壇でよく見られるように、激しい色彩コントラストで可能な限りの色数の花植え込んだりすると、その結果、庭の存在がけばけばしく下品になったり、コントラストがきつくてイライラさせられる。 庭を作ることは、絵を描くことだということを覚えていて欲しい。インチ単位ではなく、何百フィート、ヤードのキャンパスに、生きた花で描いた絵を、外の日中の光のもとで見る。 だから、我々は花の美しさと太陽の光のためにもきちんと絵を描くべきであり、それらを使う画家として、あらかじめ庭のカラー・スキームは慎重に配慮し、入念に配色すべきである」

同じく今年のガーデニングショウで私がデザインした、赤がテーマの庭。
結局、赤い花を数多く咲かせることより、そうした花をいかに引き立てるか、周囲の緑の配置がもっとも難しい。 ここでは、イタリアンサイプレス'スウェンズゴールド'(背の高いコニファー)と、銅葉のスモークツリーがとても役にたった。

実はこれらの考え方は、ただ花さえ咲いていれば嬉しかった数年前の私には、まったく驚愕すべき意見だった。 以来影響を受けて、毎年のように自分の庭のカラー・スキームを検討し「今年はピンクとパープルで...」などと、花の色の配置には特に気を使うのだが、こぼれ種の花が赤や黄色で元気良くカラースキームをぶち壊しても、私は、そんな花も可愛くてそのままにしておきたい優柔不断な園芸家なので、カラースキームはいつも最初の計画と違う結果が生まれている。

庭はその持ち主の全人格がでてしまう空間でもある。優柔不断な園芸家の庭も、まあ、それはそれで本人がハッピーならよい。ガーデニングは、学びながらそのプロセスを楽しむもの。でも、来年はどうなりますことやらね...。
さて、皆様のお庭でも来年の春はなにか色彩のテーマを作ってみてはいかがだろうか。どんな色彩でも、先着順で無節操に配置されるよりは、格段によくなること請け合いだ。

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