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吉谷桂子さんのガーデンデザイン講座

第12号 : ガーデン・テクスチャー

「ガーデン」または「庭」と聞いて閃くインスピレーション。
多くの方は、そこに植わる植物や、そこに配置される構造物がどんなふうに構成されるか、色や形のデザインに思いを巡らすことと思う。

私が庭のデザインを考えるとき、それは最初、紙の上ではじまる。
もっとも、最初は、東西南北、それぞれの日当たり状況や風通し状況など、事前の調査をもとにプランツエコロジー(植物の生態環境)にあった植物を事前に選ぶことから始まる。
そのうえで花や葉っぱの造形的な点・線・面、春と秋の繁茂の違い、全体のカラースキームと季節による色彩の転移、その他さまざまな要素を紡ぎイメージを膨らませて、その上でスケッチブックの一ページに広がるのは、色鉛筆などを使ってのラフ・スケッチであり、そこで表現されるのは、色と形…。残念なことに、そこで使われるものの質感は表現できない。
質感とは、ものの表情、植物なら大まかに分けると艶のあるもの、ないもの、堅いもの柔らかいもの、ごついもの、繊細なもの、構造物ならそれこそ、古びたもの新しいもの、味わいのあるなし、言い出したらきりがない。
そこで、いつもの卓上のガーデン・デザイン作業に、莫大なフラストレーションが訪れる。

庭の印象を決める最後の要は、物の素材感、テクスチャーなのに…。
また、庭のデザインを注文してくれているクライアントや、実際の工事施工をしてくれる業者の方々に的確に伝わらないのではと不安になる。
なので、実際の工事が完了したとき、考えていたとおりに、複雑な植物のテクスチャーが交わり、すでに古びていい感じになった植木鉢やガーデンファニチャー、うまくいい味わいにペイントされたウッドフェンスやアンティークブリックを使った構造物が、全体にうまい具合に予定調和的に庭に収まると、ホッとする。


ウィケットフェンスは、英国の庭に欠かせない枝編みのフェンス。
ヤナギやカバの長い枝が使われているが、素材独特ののんびりとした表情がリラックスのムードを出すのに効果的。
かたや、スダレは日本の夏の庭の景色に欠かせない素材。
竹を使ったフェンスなども涼しげな日本的テクスチャーの代表だろう。
ウィケットフェンス スダレ
↑ウィケットフェンス
スダレ→


特に構造物の素材感、テクスチャーは非常に感覚的なものであり、個人的な嗜好性も強く反映するものなので、それこそ自分のイメージにぴったりと合うものを見つけるのは難しい。特に私は日本でそれを見つけることが難しいと感じている。
大量生産された新品というのは、質感が画一的で味わいに欠く傾向があるが、手作りのものや長い間使い込まれたものには一言で表現できない暖かみや表情があるが、なかなか好みに合ったいいものがみつからない。
特にガーデンパスに使う素材など、安価なものをうまく使えたら…と、常々考えるが、それも難しく高価なアンティークレンガなどを使ったほうが無難な仕上がりとなる。

以前、フランスのジベルニーにモネの庭を訪ねた時、園路の一部分が、ただの平坦なコンクリート敷きだったのでがっかりしたことがある。
大勢の観光客を日々迎えるための処置だったかもしれないが、そのコンクリートの余りの味気なさに、庭全体の印象まで味気なく思えたものだ。
以来「コンクリートは悪!」と決めつけていた私だが、先日、英国コッツウォルド地方にある植木鉢の工房、ウィッチフォードポタリーを久々に訪ねて素敵な景色を見つけた。
生乾きのコンクリートの上から荒くテクスチャーを入れて仕上げたガーデンパスである。ざらざらとした質感が雨の日の滑り止めにもなるし、味わいがあってよい。
素材感がうまくコントロールされた好例である。これならコンクリートもいいかもしれない。
例えば、さらにこの上を猫や犬を歩かせて足跡をつけたり、カラフルな石を埋め込んでハンドメイドな雰囲気をだしてもいいかもしれない。やはり、ものは使いようだ。


質感の違い リタッチされたコンクリート
地面をカバーするのは、砂利かはたまた煉瓦か。
たとえばこの写真のコンクリートだって、このように表面にタッチ(ストライプの筋を入れて表情が豊かになっている)を入れれば時間の経過とともにいい感じになる。
また、艶のある置物と艶消しの表情を持つ植物の組み合わせもおもしろい。


庭は、草花の自然な美しさと人工物の調和によって独特の個性がでるものと思う。庭は、それぞれに工夫をして、ほかと違う、その人らしさ、個性を表す楽しみに満ちているのである。


water feature
ガーデンにおける水はもっともほかの構造物とは違った魅力的な質感を持つ素材だ。
砂利や砂などのドライな質感に対して、瑞々しいウエットな質感と同時に、水音というさらに新鮮なエレメントが加わって…。
ウィッチフォードポタリー
ウィッチフォードポタリーの景色は、自然に見えるが実は超人工である。
そのわけは、最初からメロウ(円熟して美しいさま)な仕上がりを目指している点。
使い込んだ植木鉢の古びた表情に加えて、いかにも手作りの大ざっぱな土壁の仕上げが見事である。
この質感こそが庭の美しさを盛り上げるものだ。
質感の異なる植物
あえて質感のことなる植物を隣りあわせに並べるのは実に目に新鮮で楽しい眺め。
特に、このようにススキなどのグラス植物とアエオニウム黒法師などの多肉植物が視界に入るのは愉快な気分。

吉谷桂子のバラのある暮らし

≪第11回


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